線形代数学第一(1年生・前期)

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 連立方程式の解/ベクトルの線形独立・従属の話(6月9日)
 ベクトルと空間の次元/ベクトルが張る空間/基底の話(6月14日)
 ピボット/行列の零空間の話(6月21日)
 逆行列の話(6月28日)
 ベクトルの長さと直交(7月5日)
 直交補空間の話(7月12日)
 線形代数学第一のポイント(7月20日)

連立方程式の解/ベクトルの線形独立・従属の話(6月9日)

Q1: 線形代数って何だ?
A1: Ax=bを解くこと。

Q2: それだけ?
A2: しかし、これがいろいろと難癖がある。だから、線形代数がある。また、代数といいながらベクトルや空間なんか使って幾何学的に考えるのも慣れが必要。言葉の意味(定義)に早く慣れることも大切。「この言い方はむかつく」といっても始まらない。

Q3: どんな癖?
A3: 簡単な例を考えてみる。各自、次の連立方程式を解いて下さい。

(例1)

u + 2v = 1     唯一の解がある 
2u -  v = 0 
(例2)
u + 0.5v = 1    解けない(不能)。0=(零でない値)となる 
2u +     v = -1   2本の方程式の左辺の関係に注目!
(例3)
u + 0.5v = 1   解けるが、解が沢山ある(不定)
2u  +   v = 2   例2と何が違う?(零でない値)の部分が0となる。これ
                         は右辺がある条件を満たしているから。どんな条件?
(例4)
u + 2v = 1    さて、解けるかな? 3本の方程式を満たす解はない。
3u -  v  = -1   そこで、誤差を最小にする解を求める(→3章まで待つ)
-u + v   = 2
(例5)
u + 2v - w = 1   未知数の数>方程式の数だから不定解?その通り。 
2u +  v + 2w = -1
 
(例6)
u + 2v - w = 1      未知数の数>方程式の数だから不定解?その通り?? 
2u + 4v - 2w = -1 
*以上まとめると、方程式の数=m、未知数(変数)の数=nとしたとき、次の可能性が
  ある。
(1)m>n 不能解、唯一の解、不定解
(2)m=n 不能解、唯一の解、不定解
(3)m<n 不能解、不定解
いずれの解になるかは、方程式をAx=bと表したとき、行列Aとベクトルbの性質に依存する。

Q4: Aの性質とは?
A4: Aはm行n列の行列である。m>nの時は列ベクトルが線形独立であるか?m<nの時は行ベクトルが線形独立であるか?m=nの時は列ベクトル及び行ベクトルが線形独立であるか?がポイント。

Q5: bの性質とは?
A5: Ax=bを満たすxが存在するということは、ベクトルbが行列Aの列ベクトルの線形(1次)結合で表されることになる。このとき、「bは列ベクトルの張る空間(Aの列空間)にある」という。方程式の形やAの性質がどんな場合でも、bがAの列空間にあれば唯一の解、または不定解がある。

Q6: ベクトルが線形独立/従属とは?
A6: ベクトルx、y、zを考える。一つのベクトルが他のベクトルの線形和(x=ay+bz、a,bは定数)で表されるとき、これらのベクトルは線形従属である。そうでないときは、線形独立である。
もう少し厳密にいうと「ax+by+cz=0がa=b=c=0のときのみ成り立つとき、x,y,zは線形独立であり、a=b=c=0以外で常識が成り立つときは線形従属である。」

Q7: 方程式が線形従属とはどんなこと?
A7: (例2、3、6)の左辺がこれに相当する。第1式の左辺を2倍すると第2式の左辺になる。一般的には、左辺に関して、ある式が他の式を何倍かして加算することにより求められる場合が、線形従属である。こういった関係にない場合には、線形独立。
 これは、左辺の係数よりなるベクトルを考えると、ベクトルの線形独立/従属と同じである。

Q8: 連立方程式の次元が高いとき、線形従属かどうかを見分けるのは難儀する。何かいい方法は?
A8: Gaussの前進消去を行ったとき、左辺の係数が全て零になる方程式が一つでも発生したら線形従属である。逆に、このようなことがなければ線形独立である。

Q9:高校でも連立方程式はやった。何が違うの?
A9:連立方程式の規模によらない、解法や解析方法を勉強する。
  ・実際に出くわす連立方程式は規模が大きい。
  ・2元や3元連立方程式なら解けるが、それ以上は解けない、ではちょっと、ちょっと。
  ・より一般的に物事を扱うのが数学的なやり方。これは、どんな分野でも大切。
     モデル化→解析→法則性を見つける
  #話しがややこしくなってきましたが、要するに「サイズにはこだわらない」ということです。
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ベクトルと空間の次元/ベクトルが張る空間/基底の話(6月14日)

Q10: 次元って何ですか?ベクトルの次元と空間の次元はどう違うのですか?
A10: ベクトルの次元とはホテルの部屋数のようなもの。要素(部屋)の数が10個あれば、10次元ベクトルである。しかし、10部屋のうちいつも5部屋しか客が入っていないとすると、実質的な次元は5次元です。ここまで考える必要はないけど。
 一方、空間の次元とは、その空間にあるベクトルの次元で決まるのではなく、 線形独立なベクトル の数できまる。10次元ベクトルの分布する全空間(10)は10次元ですが、その中である性質を満たす 部分空間 を考えると10次元以下になります。

Q11: 「線形独立なベクトルの数で決まる」とはどういうこと?
A11:  空間 に分布する任意のベクトルは 基底 と呼ばれるベクトル集合の線形(1次)結合で表される。この基底ベクトルの数が空間の次元を決める。例えば、3次元空間で2個の重ならない(線形独立な)ベクトルの線形結合で表されるベクトルは平面上に分布する。この平面が部分空間で、この次元はベクトルの個数2,即ち2次元です。このとき、「2個のベクトルは平面を張る」といいます。
 2本の重ならない鉛筆の上に下敷き(平面)を載せることができますが、1本、または3本の鉛筆の上には下敷きを載せることはできません。

Q12: さっきから、「空間」という言葉がよく出てきますが、これって何んすか?
A12: 単に「空間」ともいいますが、「ベクトル空間」のことです。ベクトル空間とはベクトルの線形演算(定数倍と加算)に関して閉じている集合です。

Q13: 「閉じている集合」?ますます分かんねーよ。おれって頭悪いのかな?
A13: そう心配することはない(でも、ちょっと心配)。今、あるベクトルの集まりΩ(オームではなくオメガと読む)を考える。この中にある(イ)「任意のベクトルx、yに対して、ax+by、(a,bは任意の定数)もΩに含まれる」とき、Ωはベクトル空間である。この「含まれる」ことを「閉じている」という。
 全空間()は当然ベクトル空間である。全空間のある部分に着目したとき、上記(イ)の条件を満たす場合は「部分空間」となる。「空間」=「ベクトル空間」であることに注意する。
 さて、この空間(全、部分とも)にある(ロ)「任意のベクトルはある有限個のベクトルの線形結合で表される」。

Q14: この当たりがいまいちシャキーンとしねーんだよなあ。
A14:  (イ)の条件と (ロ)の条件が実は同じことであるという点が、空間の次元を理解する上でポイントです。

Q15: そうそう、ここ、ここ!!おれって、頭いいのかなあ!
A15: なかなかセンスがいいですね。
 まず、(ロ)→(イ)を証明しよう。(ロ)より、あるベクトル集合Ωの全てのベクトルが線形独立なベクトルu,vの線形結合で表されるとする。このとき、2つのベクトルx=au+bv、y=cu+dvに対する線形演算ex+fyは(ea+fc)u+(eb+fd)vとなり、やはりu,vの線形結合で表されるから、この集合Ωに含まれる。従って、(イ)を満たしている(a〜fは定数)。
 次に、(イ)→(ロ)を証明しよう。Ωの2つのベクトルがx=ar+bu、y=cv+dwと表され、r,u及びv,wは線形独立であり、r(またはu)はv,wの線形結合では表せないとする(r,uのうち少なくとも1つはv、wに対して線形独立)。このとき、z=ex+fyはgr+hv+iwとなる(a〜iは定数)。zもΩに含まれるから、Ωのベクトルを表すのに3個の線形独立なベクトルが必要となる。これを繰り返すと、線形独立なベクトルが増えて行く。しかし、「n次元ベクトルの線形独立なベクトルの数は高々n個である( 説明 )」から、n個で頭打ちになる。
 一方、n個のn次元ベクトルの線形結合で表されるベクトルが分布する空間は全空間()である。従って、部分空間のベクトルはn未満の線形独立なベクトルの線形結合で表される。この数をmとすると、上のベクトルx、y、zはいずれもm個の線形独立なベクトルで表される。このmが「空間の次元」である。同時に、このmは空間の大きさ(広さ)を表している。
 ある空間にある任意のベクトルがm個の線形独立なベクトルの線形和で表されるとき、その空間はこれら「m個のベクトルで張られる空間」であるという。(説明が長くなった、ごめんなさい)。

Q16: ウーム。後半の証明は、要するに、の部分空間を考えたとき、その空間のベクトルは全てm(<n)個の線形独立なベクトルで表される。そうでなければ、(イ)の条件より、空間の次元はどんどん上がっていき、最後は全空間まで行きつく。そうなれば、部分空間ではなくなる。それは困るので、部分空間にはその中の全てのベクトルを表せるm(<n)個の線形独立なベクトルがあるはず、ということですね。
A16: その通り!君って見かけによらず鋭いね。そのm個のベクトルのことを「 基底 」と呼んでいる。

Q17: だけど、「n次元ベクトルの線形独立なベクトルの数は高々n個である」ってのが、よく分からねーや。
A17: 3次元ベクトルで説明しよう。まず、次のベクトルを考える、

=(1,0,0)、e=(0,1,0)、e=(0,0,1)
これらのベクトルは互いに直交し、長さが1であるので「単位ベクトル」と呼ばれる。要するに、3次元空間の座標軸を表している。
 まず、これらが線形独立であることは容易に分かる。分かるね!次に、3次元()の任意のベクトルを表すためには、e、e、eが全て必要である。何故ならば、ベクトルの第1、2、3要素はそれぞれe、e、eで表されるから。
 次に、あるベクトルaを加えて、{a、e、e、e}が線形独立となるかどうか調べてみる。
a=(a,a,a
とすると、
a=a+a+a
と表される。a,a,aはaの要素であり、零以外の値を取り得るので、 ベクトルの線形独立の条件より、{a、e、e、e}は線形従属となる。このことはe、e、e以外の線形独立なベクトルを用いても同様に成り立つ。
 線形独立なベクトルの組は1通りではない。しかし、いずれもその組の中に含まれる線形独立なベクトルの数は3個である。

Q18: ベクトルが直交するとは?
A18: (少し疲れてきた)。2次元、3次元でいえば「直角に交わるベクトル」といえる。代数的にいうと、「ベクトルの内積が零」ということ。(ベクトルa,bの内積)=ab、Tは転置を表す。(横ベクトルx縦ベクトル=スカラー)。また、「直交するベクトルは互いに線形独立である」、しかし逆は必ずしも成り立たない。
 ベクトルaとbが直交している場合、aはbの成分を全く含まない、bもまたしかり。2次元で直交するx軸、y軸を考えたとき、x軸上ではy=0、y軸上ではx=0となり、相手の成分はない!赤の他人です。これに対して、線形独立なベクトルは相手の成分を含んでもよい。

Q19: ベクトルの長さとは?
A19: (こいつ、しつこいな)。例えば、ベクトルa=(a,a,a)の長さとは、(a+a+a1/2である。3次元までは視覚的に分かるがそれ以上は分かりにくい。しかし、1次元から始めて次元を1つ増やしながら、ピタゴラスの定理(これを知らないとは言わせない)を繰り替えし使えば、上式の一般形が得られ、なんとなく長さを表しているらしいことが分かる。分かるよね、君! 

Q20: (念を押されると、分からないといえない雰囲気になってきたな、ヤベエ)。あと一つだけ教えて下さい。「基底」って何ですか?
A20: (こいつ、人の話聞いてんのか?)。基底とはベクトル空間の任意のベクトルを表すのに用いられる線形独立なベクトルです。例えば、a=(−3,2)を表すのに、e=(1,0),e=(0,1)を用いると、

a=−3e+2e
しかし、e=(1,-1)を加えても、
a=−e−2e+e
と表される。このとき、{e1、}と{e、e、e}は両方とも基底かな?前者は基底であるが、後者は基底ではない。違いが分かるかな?ポイントは、{e、e、e}はもはや線形独立ではないということ。

Q21: (違いが分かるほど年食ってねえっての!)。エ、エー、まあ!なんとか。要するに、欲張っちゃいけないということですよね。(今日はこのぐらいにして、バイト行こ〜と)。
A21: そうそう、相変わらず鋭いね。(やっとこっちの気持ちが分かったようだな。やれやれ)。

Q22: (ピボットって、なんっだたっけ??)。
A22: エ!なんか言った?
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ピボット/行列の零空間の話(6月21日)

Q23: (日本、負けちゃったなあ。あ〜あ、つまんね〜の)
A23: (日本、惜しかったなあ)

Q24: あの〜、ピボットって何ですか?
A24: (今頃、ピボットとは、なかなかいい度胸してるな)。まず、ガウスの前進消去で現れる対角要素(階段形の上三角行列の場合はずれる)ですね。この値を使って、同じ列の下にある要素を零にしていきます。

Q25: それだけのことですか?
A25: いやいや、そうではない。連立方程式や(係数)行列の性質を表すパラメータとして、いろいろなものがあるが、ピボットもその1つです。正方行列を考えたとき、ガウスの前進消去において、対角要素が零になる(行や列の入れ替えを行っても)場合は、連立方程式や行(列)ベクトルは線形従属になります。また、ピボットが非常に小さい場合は、線形従属ではないがそれに近い状態にあります。この場合は、計算誤差が増幅され正しい答えが求まりません。
 階数も行列の真の大きさを表す重要なパラメータですが、これは零でないピボットの数と同じです。更に、零でないピボットの値のばらつきを見ることで、行列の素性が分かります。この当たりは、ちょっと範囲外かな?

Q26: (素性が分かる?いやな言葉だ!)エ〜と、Aの零空間ってのが、いまいちなんですが。
A26: Aの行(列)空間は行(列)ベクトルで張られる空間であり、直感的に分かりますが、零空間はちょっと捉えどくろがないですね。しかし、これらは相補う関係にあります。

Q27: (相補う?おれは誰と??)。エ〜と、もう少し、詳しくお願いします。
A27: 簡単のために、nxn行列で考えます。n個の行(列)ベクトルが線形独立であれば、Aは逆行列A−1を持ち、Ax=0はx=0の解しか持たない。即ち、Aの零空間は原点のみです。一方、行(列)空間はn次元空間になります。
 しかし、n個のベクトルのうち、r個のみが線形独立であるとすると、行(列)空間はr次元に縮退します。一方、Ax=0の解はn−r個の自由変数を持ち、n−r個のベクトルの線形結合で表される。即ち、Aの零空間はr次元空間になります。要するに、Aの行(列)空間が縮んだ分だけ零空間が広がっています。これが、相補な関係です。分かりましたか?

Q28: ホ〜!よく分かりました。要するに、俺の点数が減った分、誰かの点数が上がっているということですね。(こりゃ!うかうかしてられないや!他の奴らも遊びに誘わなきゃ!)。
A28: 。。。。。。
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逆行列の話(6/28)

S29: (とうとう日本負けちゃったなあ!あ〜あ、この梅雨空の下、生きる元気なくなったよ)。
T29: (攻め上がるときのスピードと連携が。。。ウーム、でも世界を相手によくやった!)。 

S30: 突然ですが、逆行列って何ですか?(俺みたいに世の中に逆らえないタイプは、この「逆」ってのが苦手なんだなあ)。
T30: ある行列Aに対して、BA=I、AC=I(I は単位行列)を満たす行列B、Cをそれぞれ左逆行列、右逆行列という。

S31: あの〜、そういう形式的なことじゃなくて、中身をズバリお願いします。
T31:(こいつ、見かけによらず中身にこだわるな)。そうだね、もっと中を覗いてみよう。
簡単のために、Aをnxnの正方行列として、その列ベクトルをa12・・anとし、これらは全て線形独立であるとする。即ち、階数がnであるとする。左逆行列
BA=I     ・・・(1)
の場合を考える。Bの行ベクトルをb12・・bnとする。式(1)はbとaの内積を用いて次のように表される。

T =1(i=k)    ・・・(2a)
    =0(i≠k)   ・・・(2b)
Tは転置を表す。式(2b)はbがa(i≠k)と全て直交することを意味している。
を除くn−1個のベクトルaはn−1次元空間を張る。ベクトルb(i≠k)はこのn−1次元空間に直交していることになる。即ち、bはこの空間の情報は全く持っていないし、n−1次元空間の方もbの情報は全く持っていない。

S32: へ〜!世の中って、素っ気ないものですね。(そういえば、俺もよく仲間外れにされるな。俺の知らないところで、悪いことやってんだ、きっと)。
T32:しかし、bはaとは情報を共有している。bはaとは直交できない。分かるかね。

S33: (おっと!来たね)。エ〜、まあ、あの〜〜、例えば、2次元のベクトルは平面までしか張れない。(そうだよな、座標が2つしかないんだから)もし、線形独立な2次元ベクトルが3個あったとすると、これらは3次元空間を張ることになるのでおかしい。(何がおかしいのかな?)。
T33: そうそう、よく分かっているね。更に、aとbは長さに関しては逆の関係にあります。即ち、aが大きいとbは小さい、あるいはその逆になっている。

S34: まだ、ぼや〜としてるんですが。
T34: (いつものことじゃないのか)。bの方向はn−1個のベクトルa(i≠k)が張る空間に直交するように決まり、その大きさはaの長さから決まる。このようなベクトルは一通りしかない。

S35: はあ。
T35: もう少し、別の見方をするとこうなる。Aの列ベクトルは必ずしも直交しているとは限らないし、長さもまちまちです。ところが,Bをかけると見事に正規直交系に変換されてしまう。単位行列の列ベクトル(行ベクトル)は単位ベクトル(例:e=(0,0,1,0,0))で、なじみのあるx,y,z座標系に相当している。
ベクトルに行列をかけて新しいベクトルを作ることを線形変換という。一般的には、線形独立なベクトルの組は必ず正規直交系に線形変換できる。

S36: 要するに、曲がった根性をたたき直す、ということですね。(ヤベエ!説教が始まる前に、ずらかろう)。有り難うございました。
T36: (今年の梅雨は実にうっとうしいなあ)。
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ベクトルの長さと直交(7/5)

S37: (やったー!クロアチア万歳!!日本の分までがんばれ!!おれって変かな?お〜眠い)。
T37: (まさか!3−0でドイツに勝つとは!ウーム!これは頑張ってもらわないと)。

S38: n次元ベクトルの長さって何ですか?4次元以上になるとかいもく分からないんですけど。(おれって、単純すぎるのかなあ?まあ、純真な方がいいがや)。
T38: そうですね、まず、3次元ベクトルで考えてみましょう。ベクトルを

a=(a,a,a
とします。座標を正規直交系で考えます。即ち、各座標は
=(1,0,0),e=(0,1,0),e=(0,0,1)
で表され、
a=a+a+a
となる。座標の各成分がa,a,aになります。e,e,eのなす角度が互いに90度(直交)であることは分かりますね。

S39: この当たりは、難なくクリアです。
T39: まず、

b=a+a
の長さを求める。e、eの角度は90度(直交)であるから、ピタゴラスの定理よりこの長さは
||b||=(a+a1/2
となる。bとaの角度はやはり90度(直交)であるから、aの長さはbとaに対してピタゴラスの定理を適用することにより求まる。
||a||={||b||+a1/2=(a+a+a1/2
S40: ここまでは分かります!しかし、4次元以上になると、とたんに分からない。
T40: まあ、そう悲観することはない。4次元以上の空間は誰も見たことはないよ。要は考え方ですね。上の3次元の話しで実は大切なことが含まれています。

S41: エッ!なんすか??
T41: aの長さを考えるときにbとaのみを考え、かつこれらが直交しているという点です。一般に

b=(*,*,0)    *は零も含む任意の値
=(0,0,*)
と表されます。これらの関係は、b=(*,0)、a=(0,*)と同じです。即ち、第1、第2要素をひとまとめにしても直交しているという関係は変わりません。こうやってみると、bとaで張られる空間(2次元平面)上でこれらを合成してaを作ることになります。

S42: ははーん。要するに2つのベクトルだけを見ろ、ということですね。
T42: これを繰り返せば、一般のn次元ベクトルの長さは次のようになる。

||a||=(a+a+..+a1/2  ・・・(1)
S43: 直交する、という点をもう少し具体的に分かりやすくお願いします。
T43: 2つのベクトルa,bが「直交」する、とは次のことを意味している。これらは全て等価です。
(i)   a,bのなす角度が90度である。
(ii)  a,bの内積が零である。
(iii) ||a+b||=||a||+||b||2  ピタゴラスの定理が成り立つ。
(iv) aとbは互いに相手方向の成分を持っていない。
ベクトルの長さの定義式(1)を用いれば、(ii)と(iii)が等価なことは容易に分かる。分かるね!

S44: エッ!エ〜まあ。(あぶねえなあ、今日は寝不足だってのに!)。
T44: (i)のなす角度が90度というのは、n次元の場合は分かりにくいですね。そこで、次のように考えてみましょう。a,bの張る空間を考えます。a,bがn次元(n>2)でもこの空間は2次元平面になりますね。今、この平面だけを考えるますが、a,bの関係を調べるのに一般性を失っていない。
2次元平面はe=(1,0)、e=(0,1)で張られる。a,bはe、e方向の成分により、次のように表される。

a=(a,a)  ・・・(2a)
b=(b,b)  ・・・(2b)
こうなれば、(i)〜(iv)の関係は簡単に分かるね!

S45: zzz(おっと、まぶたが。重くなってきた)。ふあ〜あ!あ!
T45: (目あけて寝てんのか?こいつ!)。このように、a,bの張る平面上で考えれば、2次元ベクトルに帰着できるので分かりやすい。

S46: 「互いに相手方向の成分を持っていない」、ここがイマイチなんですけど。
T46: (起きてたのか?)。「a,bの内積が零ならば、a,bは互いに相手方向の成分を持っていない」ことを示そう。a,bは式(2a)、(2b)とする。
aと直交する(内積=0)ベクトルcを考える。a,bが張る平面はa,cでも張ることができる。今、bがa方向の成分を持っているとする。即ち、bを次のように表す。
b=ra+sc、(r,sはスカラの定数)
aとbの内積は零であるから、
b=a(ra+sc)=raa+sac=0
しかし、aa≠0、ac=0であるから、r=0となる。従って、bはa方向の成分を持っていないことになる。

S47: なんとなく、分かるんですが。。。ウーム。
T47: こんな風にも考えられます。aとbを同じだけ回転し、aをe=(1,0)方向に一致させ、a’=(*,0)(*は零を含む任意の数)とする。このときのbはb’に変化するとする。a,bの角度とa’,b’の角度は同じである。a’との内積が零になるb’は(0,*)の形しかない。即ち、a’とb’は同じ成分を持っていないことが分かる。

S48: 今度はちょっぴり分かりました。所で、こういう話しって、おれの将来にどう影響するんですか?
T48: 電気情報の世界で飯を食っていこうと思ったら、データ解析等いろいろな所で出くわすよ。前にも言いましたが、数学のモデルを使って現象やシステムの動作を理論的に解析する、ということは結構重要だよ。具体的には、コンピュータシミュレーションで確かめる場面も多い。

S49: へ〜!いろいろ使うんだ(おれも、ゲームではコンピュータ(だよな)を結構使いこんでるけど、飯食ってけるかなあ?不安だなあ)。
T49: (今日はウインブルドンだな)。
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直交補空間の話(7月12日)

S50: (クロアチア3位!よっくやった!て〜ことは、Japanも捨てものじゃないということだ。おれの論理あってるよな。さあ〜、今度はフランスを応援しよ〜と!)。
T51: (終わってみれば、サンプラスか。イワニセビッチもサーブで頑張ったけどなあ)。

S51: 「ベクトル空間が直交する」というのが、イマイチなんですけど。部分空間として図1のようにRにおける平面V,Wを考えたとき、これらが垂直に交差していれば、直交していることにならないんすか?
T51: ベクトル空間というのは、ある形の空間があるのではなく、あくまでも「ベクトルの集合(*1)」と考えて下さい。従って、空間V,Wが直交するというのは、ベクトル集合V,Wが直交することであり、「V,Wに含まれる全てのベクトルが互いに直交する」ことを意味します。図2がRで直交する部分空間の例です。
(*1)ベクトルv,wがあるベクトル空間にあるとき、av+bw(a,bはスカラ)もまたこの空間にある。

 
 図1 直交しないベクトル空間    図2 Rで直交するベクトル空間の例

S52: は〜あ、要するにベクトル空間の形にこだわるな、ということですね。分かりました。
それから、行列Aの行空間と零空間が直交する、というのはすぐに分かるのですが、これらが直交補空間をなすという点がイマイチなんですけど。
T52: (「イマイチ」しか知らないのか)。なかなか、いい質問ですね。

S52: (おれって、やっぱ、質問のセンスいいんだ!)。
T52: まず、n次元空間Rを考える。1つの 基底 をv〜vとする。v〜vとvk+1〜vで張られる部分空間を各々V,Vとする。このとき、Rの全てのベクトルがVとVに分けられるでしょうか?即ち、図3のようになるでしょうか?

           図中のRn、V1,V2はR、V,Vの意味 
図3 ベクトルの集合として分離   図4 基底の集合として分離       

S53: (おっと、早くも来たね!ウーム...)。た、た、たぶん、そうなると思います。
T53: 実に、頼りない返事だね。ベクトル空間の”補空間”は集合の”補集合”とはちょっと意味が違います。即ち、「Rの全てのベクトルはV,Vのいずれかに含まれる」という意味ではありません。言い換えると、Rのベクトルでも、V,Vには含まれないベクトルがあります。例えば、Rの基底v〜vの線形結合で表されるベクトルはV,Vには含まれない。

S53: はあ、はあ、(補集合もよく分からないけど)、「補空間はベクトル集合を分ける空間ではない」ということですね。
T53: そうそう、なかなか感ががいいね。 基底 に関して”補集合”になっていると考えた方がよいでしょう。
,Vは共通ベクトルとしては零ベクトルのみを有し、これらのベクトルを合わせてもRにはならない。式で表すと次のようになる。
(V,Vに含まれるベクトルに着目したとき)

のベクトル∩Vのベクトル=零ベクトル  ・・・(1a)
のベクトル∪Vのベクトル<Rのベクトル ・・・(1b)
しかし、基底に着目すると、次のようになる。
の基底∩Vの基底=空集合    ・・・(2a)
の基底∪Vの基底=Rの基底  ・・・(2b) 
S54: はは〜ん、少し分かってきました。所で、話し戻しますが、行空間と零空間が直交補空間とは?
T54: 上の話しが分かったとすると、行空間と零空間の基底が図4の関係、即ち、式(2a)、(2b)を満たしているかどうかが問題になる。

S55: そうですね。(少し、よたよたしてきた)。
T55: まず、行空間と零空間は直交しているから式(2a)が成り立つ。次に、行列Aをmxnとする。このとき、行ベクトルも零ベクトルもn次元である。行空間の次元は階数rであり、零空間の次元はAx=0における自由変数の数=n−rである。行空間の基底をa〜a、零空間の基底をx〜xn−rとすると、各々は線形独立であり、かつ{a}と{x}は直交している。従って、これらを合わせたベクトル集合も線形独立になる。ベクトルの個数は合計n個であるから、n次元を張る。即ち、式(2b)が成り立つ。 
(例)
=(1,0,0,0)、a=(1,1,0,0) は線形独立(直交していない)
=(0,0,1,0)、x=(0,0,1,−1) は線形独立(直交していない)
,aとx,xは互いに直交している。

S56: は、は、はあ。要するに、行空間の次元が減った分、零空間の次元が増え、その和は常にn次元である。また、2つの空間(の基底)は直交しているから、これらの基底を合わせたベクトル集合はn次元空間の基底になる、ということですね。
T56: すばらしい!(頭がいいのか悪いのかイマイチつかみ所のないやつだ)。

S57: 最後にもう一つお願いします。それでは、図3のようにRの全てのベクトルを2つの空間に分けることはできないのですか?
T57: 実に素朴でいい質問だね。

S58: (おれは、どうせ素朴で純な人間だよ、フン!)。
T58: 要するに、Rの全てのベクトルがある部分空間VとVのいずれかに属するようにベクトル空間を分けられるか?という質問ですね。答えから先に言いますと、「それはできない」ということになります。Rの任意のベクトルはv〜vの線形結合で表されます。このベクトルが空間V(V)に含まれるとすると、この空間の基底はv〜vになり、全空間Rと同じになってしまう。更に、VとVが同じベクトルを基底として持つ場合は零でない共通のベクトルを含むことになる。
図2の例では、直線Vと平面Wの共通ベクトルは零ベクトルのみで、これらの基底の和はRの基底と同じになります。しかし、V,Wのいずれにも含まれないRのベクトルがあることは容易に分かる、ね!。

S59: は、は、はい。分かります。
所で、どうでもいいんですけど、図にちょっとゴミが見えるんですけど。
T59: ごめん、HTMLに張り付けられる図はJPGかGIFファイルなのですが、今回はビットマップからの変換でJPGファイルを作っています。メモリ容量を減らすために、ちょっと品質を下げています。他の作図ソフト/変換ソフトを使えばもっときれいになります。 

S60: は〜あ、要するに先生は技術的にまだ未熟だと言うことですか?
T60: ウムムム...他に質問は!!

S61: ありません、有り難うございました!(ヤベエ、定期試験はお手柔らかに!)。
T61: (おっと、投票に行かなきゃ!明日は4時起きか)。
 
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線形代数学第一のポイント(7月20日)

S62: (フランス優勝!万歳!修道僧のようなジダンがよく頑張ったな。しかし、この辺まで来ると日本とのつながりを考えるのちょっときつい。なんで、フランスを応援してるんだ??)
T62: (自民党惨敗か?当然ではあるが、その後がまたまた永田コップの中か。長年の官僚依存体質のため、日本を任せられる政治家が育っていない、野党は??)。

S63: 今学期、最後の質問をお願いします。いろいろ勉強してきたのですが、単刀直入に言って、大事なポイントって何ですか?
T63: (何処までも図々しい奴だな)。なかなかいい心構えだね。

S64: いえ、それほどでも(ほめられてんのかなあ?)。
T64: まず、第1に線形代数の基本は
「連立方程式Ax=bを解く」
ということですね。しかし、そのときにいろいろな形態がある( 6/9を参照 )。それを決めるポイントが
・未知数と方程式の数の関係
・方程式の線形独立/従属
・bの性質(Aの列空間にある/ない) 
その結果、連立方程式の解は
・一意解
・不定解
・不能解
となる。

第2には、「具体的に連立方程式を解く」ということですね。ここでは、ガウスの前進消去と後退代入が重要です。未知数や方程式の数が多くても、この方法を根気よく実行すれば解くことができます。
また、ベクトルの線形独立/従属性を調べたり、ベクトル空間を求めるときにも前進消去は必須です。

第3には、「ベクトルと行列の計算に慣れる」こと。加減算は対応する要素同士で計算すればよいが、積は違います。掛ける順番によって値が違います。また、ベクトルには内積(→スカラ)と外積(→行列)があるので要注意。
割り算になるともっと複雑ですね。「行列Aで割る」というよりは「行列Aの逆行列を掛ける」と考えた方がよい。逆行列はスカラの逆数と同じで「掛けて1(単位行列)になる」関係にある。但し、掛ける順番による違いはある。AB=IまたはBA=IとなればBはAの右または左逆行列。逆行列の具体的な計算方法は教科書34頁にあるGass−Jordan法を会得しておいて下さい。
「あるベクトルの逆ベクトルは?」という疑問も生まれますが、ベクトルは行列の特殊形なので、行列と同じに考えます。

S65: 第2章では、空間やら基底やら一般解やらなんやら、いろいろでてきてまとまりがつかないんですが。
T65: (まとまりが悪いのはおまえの脳味噌じゃないか?)。そうですね、いろいろな概念がでてきますから、整理して理解することが大切ですね。

S66: (おれの部屋はジャングルだけど)。お願いします。
T66: まず大切なことは、「表現が異なっても、内容は同じである」場合が多いという点です。また、同じことを代数的及び幾何学的に表現し、理解することも大切です。

第4に、「(ベクトル)空間とはベクトルの線形演算に関して閉じている空間である」ことをしっかり頭に入れて下さい。また、「空間を張るベクトルは線形独立である必要はない」、「基底とは空間を張るベクトルのうちで、線形独立なベクトルの組である」。

第5に、次の概念は全て同じであることを理解しておくこと。
・零でないピボットの数
・階数
・線形独立な行ベクトルの数
・線形独立な列ベクトルの数
・行空間の次元
・列空間の次元

同様な性質であるが、nxn行列に関して次のことは同値である。
・行ベクトルが全て線形独立
・列ベクトルが全て線形独立
・階数がn
・ピボット(行の交換可)が零でない
・逆行列がある

第6に、「行列A(mxn)に関する4つの部分空間とこれらの関係」。関係とは、
・行空間(r次元)と零空間(n−r次元)は直交補空間
・列空間(r次元)と左零空間(m−r次元)は直交補空間
・行空間はRにおけるr次元空間、列空間はRにおけるr次元空間であり、これらの間の変換(AまたはAによる写像)は1対1対応である。
計算テクニックとして、「これらの空間の具体的な求め方(1組の基底、または空間にあるベクトルの一般形を求める)」と会得しておくこと。
・Gaussの前進消去→行列U→線形独立な行ベクトル/線形独立な列ベクトルの位置/基底変数&自由変数。
(例)ベクトル(1 0 2 0 -1)、(0 0 2 0 -2)、(1 0 0 0 1)で張られる空間は何次元か?更に、この空間の直交補空間を求めよ(できるかな?)。

第7として、「Rを部分空間に分けるとは、基底を分ける」ことを意味する、即ち、Rに含まれる全てのベクトルをグループ分けするのではなく、「あるベクトルに着目したとき、その成分が部分空間に分かれる」と考える。

S67: 一気にいろいろなことを説明されたの、頭が破裂しそうなのですが、定期試験にはどんな問題がでるんですか?
T67: 練習問題や演習問題からはずれないと思います。

S68: あ、あ、そうですか、そうですよね。(ウ〜ム、勉強するしかないか、このくそ暑いのに!)。
T68: (さ〜て、試験問題作るとするか)。



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